契約の際に、請負と委任の違いをよく知った上で契約することはとても大切です。「いま依頼している清掃会社との契約を見直したい」「新しく清掃会社と契約したい」と思っている方は、請負契約と委任契約の違いについて知ったうえで契約していくのがよいでしょう。ここでは、請負契約、委任契約それぞれの特徴とメリットについてお伝えします。
請負契約の特徴
まず請負契約とは、発注者が求める仕事の完了を前提に、依頼した仕事の完全納品に対して報酬を支払う労働契約のことをいいます。請負契約を結んだ場合には、仕事が全うされなければ、報酬を支払う必要はありません。たとえば、飲食店舗の床の汚れを落とすことを仕事の完了として設定し、請負契約を結ぶことを想定します。そうすると、実際の掃除内容にかかわらず、床の汚れが落ちれば依頼主は報酬を支払う義務が発生しますが、床の汚れが落ちなければ(仕事の完了条件が達成されなければ)報酬を支払わなくていいということになります。
委託契約の特徴
一方で委任契約とは、仕事のクオリティ・できにかかわらず、仕事の実施のみを約束する契約のことをいいます。委任契約を結んだ場合、完全状態(たとえば、先ほどの例でいうと床の汚れを落とし切った状態)での納品ではなかったとしても、清掃会社が業務を遂行しさえすれば、契約者は報酬を支払う義務が発生します。つまり、清掃業者と委任契約を結んだ場合、清掃作業が行われてさえいれば、実際にはほとんど綺麗になっていなくても依頼主は報酬を支払わなければならないということになります。
請負と委託、どちらの形態で契約すべきか
請負契約と委任契約を比較してみると、実際に仕事を遂行した際の仕事の完了状態の定義、報酬を支払う条件に違いがあるということをお伝えしました。再度先ほどの飲食店舗の床の汚れを落とす仕事を想定すると、請負契約では汚れが落ちた状態が仕事の完了状態であるのに対し、委任契約では汚れを落とそうと試みたこと自体をもって仕事の完了状態となります。つまり、委任契約では、実際に汚れが落ちたかどうかということは、清掃会社側に責任の所在がないという扱いになるのです。
以上の説明から考えると、発注者側にとってメリットが大きいのは、請負契約であるということができます。請負契約であれば、もし掃除後にこれでは仕事を完了したといえないと判断できた場合には、あらかじめ契約で定めた仕事の完了状態になるまで清掃をやり直してもらうことができます。
おそらく清掃会社に仕事を依頼する多くの方が「請負契約で依頼をしよう」と考えると思いますが、請負契約を結ぶ際には注意すべきポイントもあります。
それは「清掃範囲が細かく決められているか」「清掃作業に対して求めるクオリティが設定されているか」「掃除用具代や交通費などの諸経費の負担者が明確か」「清掃中に問題が起こった際に誰が責任を負うか明示されているか」の4点を、しっかりと契約段階でチェックしておくということです。これらをチェックしておかなければ、清掃のやり直しを要求できないケースもありえますので、忘れずにチェックしておくことをおすすめします。
ここまで、清掃会社に清掃を依頼する際の請負契約と委任契約の違い、どちらがよりメリットのある契約形態かをお伝えしました。清掃は非常に大きな労力と時間のかかる業務であるため、外部の業者に依頼されることも多いと思います。その際には、ぜひ契約内容をしっかりと確認し、こちらが希望する清掃完了状態を達成してもらえるようにしておきましょう。